『娚の一生(1) (フラワーコミックスα)』一巻が無料だったので読んでみました。
西炯子さんは、ラフな絵柄の雰囲気のいい漫画を描かれるので、好きな漫画家さんです。
セリフ量は多いけど、肝心なところは人物の表情の変化で語られるので、伝わってくることがあればとても共感できるのです。
でも、感性が合わないとちょっと理解できないシーンやお話がでてきます。
大好きなお話もあるんですが、「この話キライ!」と言うお話も多い漫画家さんです。
(ちなみに私が好きな話は「電波の男(ひと)よ (flowers コミックス)」です。三篇が収録されていて、二編は好きだけど、一遍は苦手です)
この『娚の一生(1) (フラワーコミックスα)』はどうだったかと言うと、面白くもありましたが、気持ち悪いと感じる表現もあり苦手でした…。
このお話は、30代女と50代男の歳の差の恋愛ものです。
主人公のつぐみは三十路半ばの大手電機会社に勤める出来る女です。
休暇で祖母の家に来ている時に祖母が亡くなり、葬儀で親戚が集まっている所から話がはじまりますが、「昔からしっかりしてるわねー」と言うような評価をされています。
親戚たちが帰った後も祖母の家に残ったつぐみは、面倒だと服を脱いで体を拭き、面倒なのでそのまま椅子で寝ます。
しっかり者とは言え、人目がなければこんなものです。
まあ、わかりますけどね。
次の日に離れに大学教授の海江田がいるのを発見。
祖母から鍵を貰っていた海江田は、この家から大学に通うと言います。
誰もいないと思って裸で体を拭いていた様子も、実はばっちり海江田に見られていました。が、海江田の反応はクール。
押しが強く横柄な態度の海江田を追い出す事も出来ずに、祖母の家での在宅勤務に切り替えたつぐみは、そのまま海江田と一緒に暮らすことになります。
大手電機会社で出世していたつぐみが簡単に在宅勤務が出来てしまう事が現実離れしているなーと思います。
それなのに、面倒だからと裸で体を拭くつぐみの行動に妙なリアリティを感じます。
少女漫画のような夢見がちな設定と絵柄、時折見えるリアリティのある表現が共感を生む、このバランスが西炯子さんの魅力だと思います。
けれど、『娚の一生(1) (フラワーコミックスα)』はちょっとバランスを失っているように感じました。
これは読み手の問題だと思います。
私は30代ですが、30代にもなると体の衰えが見えてきたりします。
たるんだお腹とか二の腕とか、つぐみみたいにキレイな30代がいるかと。(いるだろうけど…)
50代なんてきっともっと酷いぞ!と。(人によるだろうけど…)
そんな風に思ってしまい設定だけで加齢臭を感じてしまうんです…。
裸を見られるというシーンが妙に生々しい…。
絵柄自体はラフだけど線が細く繊細で50代の海江田さんも30代のつぐみも素敵ですが、色っぽいシーンでヒクヒクと加齢臭が匂ってきます。
それから30代のつぐみは仕事は出来るけど恋愛は下手らしいのです。
振られたことが在宅勤務の切っ掛けだったようです。
仲のいい同期の友人に慰められたけど、彼女が結婚すると聞いてショック…って、おいおい30にもなって何言ってんだと。こっちは子供もいるんだぞと。
結婚して子供もいると、50代のおじさんと乙女みたいな恋愛をしている三十路の気持ちはわからないんです…。
でも、つぐみは可愛い子だと思います。一生懸命な所とか。
海江田さんも最初は嫌な奴かと思ったら、だんだんと好きになって来ました。
このお話がリアリティを全く感じない完全な少女漫画だったら面白く読めたなと思います。
ネタバレ。
この後、つぐみと海江田さんは結婚して子供も生まれるそうです。
50代でお父さんって子供が可哀想って思うけど、漫画だし丸く収まって良かったねと思います。