1960年代にプラハのソビエト学校に通っていた日本人の作者が、30年後に親友に再会する話です。
ソビエト学校時代の話から、日本に帰国して連絡が取れなくなった経緯、30年後の東欧での再会までの道のりが、ギリシャ人、ルーマニア人、ユーゴスラビア人の友人ごとに3部構成でつづられています。
イギリス、フランスに住んでる日本人は多いけど、東欧に住む日本人は今でもそれほど多くはないと思います。
1960年代なら相当少なかったはずで、10代前半の女の子の経験談はとっても貴重なものなのでは?と、外国なんて想像も出来なかったであろう作者と同世代の私の母と比べて思います。
1989年ベルリンの壁 崩壊
1991年ソ連 崩壊
ニュースで子供の頃見たことがあるけど、その前の時代にどんなことがあったのか、知識もなければ興味もなかったので新鮮で面白かったです。
社会主義のイメージはどことなく暗く閉塞感があるものだったけど、子供たちはどこでも同じなんだな、先生たちは厳しそうだけど愛情にあふれていると思いました。
もちろん社会主義の暗く窮屈な部分も描かれているけれど。
日本に帰国後も友人たちと手紙のやりとりをしていたけど、だんだん手紙が少なくなり、途絶える。と言うのは良くある事です。
日本人だったらそのまま忘れちゃうかもしれないけど、外国人で、しかも政情不安な国の子たちなので、ニュースから安否が心配になったりします。
ようやく30年後に再会を果たすわけですが、○○人だったと言う事と、昔聞いた住所と言うわずかな手掛かりしかなく、住所にはもう済んでいない、○○人のコミュニティーでも知らないお言われてしまいます。
絶望的かと思ったら、そばにいた人が名前を偶然耳にして『○○なら知ってる』と新たな手掛かりを教えてくれます。
「ほぇー、なんだか出来過ぎてるな」と思うけど、ドラマのような宴会でスピード感もあり、再会まで飽きずにワクワクしました。
友人たちの学校を離れてからの半生もそれぞれのドラマがあり興味深いです。
タイトルになっているアーニャは二番目のお話に出てくる女の子です。
タイトルから、嘘つきで嫌いだったけど、大人になって再会して嘘にはこんな悲しい深いわけがあったのね、と言う話かと思ったんですが、終始、作者がアーニャに批判的なのが気になりました。
会いたかった友人じゃないのかー・
読み終わってからAmazonの感想を読んで知りましたがNHKで再会の様子が放送されていたんですね。
NHKの事は本の中には一切出てこないけど、YouTubeで映像が見れると言うので少し見てきました。映像があるとずいぶん印象が違うがします。
会いたくて個人で会いに行ったのかと思ったら…、ちょっと感動が薄れる気がします。
でも、1996年に個人で会いに行くのは相当大変でしょう。映像を残してくれて良かったと思います。
作者の米原万里さんはもう亡くなっていますが、そんなに有名な方だたんですかね。
名前は聞いた事があったけど、全く覚えていません。
10年くらい前に活躍していた芸能人の事なんて思い出すこともないので、忘れられていくのが普通なのかな。忘れてしまうのも悲しい。
でも、この『嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)』はずっと残り続ける本です。
『オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)』を読んでから、小説の元になったと言う実話を読んでみたいと思っていたので、kindle Unlimitedで0円で読めて良かった。