漫画版『天地明察(1) (アフタヌーンコミックス)』がkindleで無料で読んだら面白かったので、弟に「面白い本知らない?」と聞かれた時に「これは?」と教えたのが『天地明察』です。
弟が、時代小説は難しくて苦手で読めない、と言うので私が貰いました。
久しぶりに読む紙の本で、楽しく読めました。
数学や暦の話題など込み入った話があるので普通の時代小説よりも難しいかもしれないけど、主人公やヒロインなどの登場人物の描写が漫画的(最初に読んだのが漫画版だったせい?)なので読みやすいと思います。
四代将軍家綱の時代、それまでの暦にズレが生じ、新しい暦が必要になって来ました。そこで新しい暦を作ったのが主人公の渋川春海です。
本来は囲碁の家系に生まれ安井算鉄と言う名前がありますが、囲碁を一生の仕事とするのに疑問を感じ、算術にのめり込んでいます。
21歳の時に、算術の勝負が絵馬によって行われていると聞き神社に向かう所から物語が始まり、そこで算術のライバルであり、目標となる人物 関孝和の存在を知ます。
同じ年の関の書いた本を恐る恐る、けれど熱意を持って読み、かなわないと打ちのめされる。
けれど、それでもまだ情熱を燃やす様子がリアルで読んでいてワクワクしてきます。
本人は自信なさげなのだけど、あふれ出る情熱が読んでいて伝わってきて、「本当に算術が好きなんだな」と周りの人が目を細めて見ているのが分かるようです。
そんな春海が、みんなの期待を集めて改暦を任されるまでが前半です。
若い春海の情熱のあふれる話で、可能性が無限にある楽しい時期で疾走感もあり面白いです。
後半から暦づくりのスタートです。
改暦の失敗から、ライバルとやっと顔を合わせるという熱い展開なんだけど、後半は目標が定まってしまったので、少し失速してしまった気がします。充分面白いんだけど。
現代でこそ常識として地球が太陽の周りをまわっているのは知っているけど、地球が何度傾いているとか、公転周期とかサッパリ実感として分かりません。
月食や日食が何日かなんてサッパリです。
それを、よく昔の人が時間までピッタリ予測できたなと感心します。
夕方に見えた月が、いつの間にか朝に見えるようになっています。そんな月を毎日毎日、何年も観測したらわかるのかなー。どれだけ膨大な時間が必要だったのか、考えると気が遠くなります。
春海の他にも、そんな暦に熱い情熱を向ける人がたくさん出てきますが、そんな人の思いが実ってやっと完成したことが壮大ですね。
春海の作った暦はその後江戸時代に何度か改暦され、明治時代には今も使われているグレゴリオ暦に変わってます。
グレゴリオ暦は1582年から使われている暦で、春海が改暦した1685年より100年以上前です。
もし、鎖国がなければ春海が改暦することはなかったのかな?
最初に読んだ漫画版は面白いと思ったけど、小説を読んだ後だとちょっと感想が変わります。
一巻だけしか読んでないからその後に壮大な絵が入ってきたのかもしれないけど、空や江戸の町の生き生きした描写がなく、人物と文字ばっかりで、出来の悪いコミカライズです。
小説は文字だけだけど、江戸の文化など良く調べてあり、映像でも見てみたいと思ったけど、この漫画じゃダメですね。
映画『天地明察 [DVD]』もあるけど、期待してるものでは無さそう…。